はじめに
こんにちは、【kanatoの資産構築研究所】のKanatoです。
資産構築研究所に、こんなご相談が届きました。定年を数年後に控えた50代のご夫婦からで、「60歳で定年になるが、年金が始まる65歳までの5年間をどう乗り切ればいいのか」「退職金をどこに置けばいいのか」「今のNISAの中身を変えるべきか」というお尋ねです。

ホー、良いご相談ですぞ。「定年」と「年金開始」の間に空白があると聞くと、それだけで心細くなるものでしてな。ですがこの5年間、中身を分ければ意外と怖くないのです。埋め方は、いくつもありますぞ。順に整理してまいりましょう。
※本記事は、いただいたご相談をもとにした匿名のモデルケースです。数値は概算で丸めています。制度の金額・要件は2026年7月時点のものです。
1. この記事の結論(先に3つ)
- 「空白の5年」は、実は空白ではありません。 60歳定年後も65歳までの雇用確保は法律で完全義務化されており、多くの方は継続雇用で収入を得られます
- 退職金は受け取ってすぐ動かさない。 まず生活防衛資金を厚くし、使い道を決めてから時間をかけて考えます
- NISAは「増やす」から「守りながら育てる」への移行期。 一律の正解はなく、生活防衛資金の厚みと継続雇用の安定度で判断します
2. ご相談者プロフィール(匿名・概算)
| ご夫婦 | 夫57歳・会社員(正社員)/妻55歳・パート(扶養内) |
| お子さん | 独立済み・教育費の負担なし |
| 世帯年収 | 額面で約750万円(夫の給与が中心。妻のパート収入は年約100万円) |
| 定年 | 夫は60歳定年。その後65歳まで継続雇用を予定 |
| 住宅ローン | 残りわずか・60歳前後で完済見込み |
| 現預金 | 生活費のおよそ5〜6か月分 |
| 投資 | 新NISA・つみたて投資枠でインデックス投資信託を毎月5万円。成長投資枠は未使用 |
| ご希望 | 「今の収入でなんとかなる?」「退職金とNISAをどう配置すべき?」 |
3. まず、不安の正体を分けてみる

ご相談を読んで感じたのは、不安が「定年後のお金」というひとかたまりになっておる、ということでしてな。ですが実際には、①60歳から65歳までの5年間の話と、②65歳以降ずっと続く話は、別の問題なのですぞ。まずはこの2つを分けて考えるのですな。
①の5年間は、収入がゼロになるわけではなく、継続雇用の収入をどう位置づけるかという設計の話です。②の65歳以降は、年金と資産をどう組み合わせて長く使うかという話になります。この記事もこの順番で見ていきます。
4. 「年金空白の5年間」をどう乗り切るか
多くの方が漠然と怖がる「定年から年金開始までの空白」ですが、まず制度面を確認しておきます。
2025年4月から、65歳までの雇用確保措置がすべての企業で完全義務化されています。定年廃止・65歳までの定年引き上げ・65歳までの継続雇用制度のいずれかを、企業は必ず用意しなければなりません。「定年が65歳に引き上げられた」という意味ではなく、多くの企業では60歳定年のまま、希望すれば65歳まで再雇用される仕組みです。

私から数字を一点。継続雇用では、給与が定年前の水準からおおむね下がるのが一般的です。目安としてよく紹介されるのは6割前後ですが、これは会社の制度・職種・地域によって幅があり、断定できる数字ではありません。必ずご自身の勤務先の再雇用規程を確認してください。
もう一点、注意したいのが高年齢雇用継続給付です。60歳時点と比べて賃金が75%未満に下がった場合に賃金の一部が上乗せされる制度ですが、2025年4月1日以降に60歳に達した人は、支給率が最大15%→最大10%に縮小されています(2025年3月31日までに60歳に達した人は従来の15%が継続)。「昔ながらの15%」を前提に資金計画を立てると見込み違いになるため、最新の支給率で確認しておきましょう。

つまりこの5年間は、「収入がなくなる期間」ではなく「収入が下がる期間」なのですぞ。ここを取り違えると、必要以上に資産を取り崩す判断をしてしまいますでな。まず目指すのは、継続雇用の収入の範囲で生活費をまかない、資産の取り崩しをできるだけ始めないことです。
5. 退職金の置き場所を急いで決めない
退職金制度がある企業は全体の74.9%で、大企業(従業員1,000人以上)の平均額はおよそ2,200万〜2,500万円というデータがあります。ただし、これは企業規模・学歴・勤続年数で大きく変わる全国平均であり、ご自身の金額は勤務先の退職金規程で確認するのが最優先です。

まとまった金額を前に、「早く増やさなければ」と焦る気持ちは分かります。ですが、受け取ってすぐ全額を投資に回す必要はありません。まず確認すべきは、①継続雇用期間の生活防衛資金として厚みを持たせるか ②住宅ローンなど確定した使い道があるか ③本当に長期で置いておける余裕資金はどれだけか、この3つです。
生活防衛資金の目安は現役世代なら生活費の3〜6か月分とされることが多いですが、収入が下がる継続雇用期間を控えている今回のようなケースでは、もう少し厚め(生活費半年〜1年分程度)を目安にすると安心材料になります。使い道が決まっていない残りの資金は、一度にまとめて動かさず、時間を分けて検討する余地を残しておくのが無難です。
生活防衛資金の目安・置き場所の基礎は、生活防衛資金とは?いくら貯めて、どこに置くかで整理しています。
6. NISAの中身も「増やす」から「守りながら育てる」へ
新NISAは、つみたて投資枠が年120万円、成長投資枠が年240万円、非課税保有限度額は合計1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)で、年齢の上限はありません。60代・70代になっても非課税で保有・新規投資ができる制度です。

ここで大事なのは、「まだNISAを増やせる年齢だから」と、20代・30代と同じ配分を続けるべきとは限らない、ということですぞ。50代後半からは、「増やす」段階から「守りながら育てる」段階への移行期に差しかかりますでな。
株式の比率をどこまで落とすべきかに、一律の正解はありません。継続雇用の収入がどれだけ安定しているか、生活防衛資金がどれだけ厚いか、退職金の使い道が固まっているかによって、適切なバランスは家庭ごとに変わります。成長投資枠を新たに使うかどうかも、「あと何年後に使うお金か」を先に決めてから判断すると迷いにくくなります。すでに積み立てているつみたて投資枠の資産を、この段階であわてて売却する必要もありません。
成長投資枠の使い方は、新NISAの成長投資枠、何を買う?目的別の選び方と8項目チェックで詳しく解説しています。
7. 65歳以降の柱:年金と資産のハイブリッド
65歳から始まる年金は、老後の生活を支える柱の一つになります。日本年金機構が示す2026年度(令和8年度)の標準的な夫婦世帯の厚生年金モデル額は月23万7,279円です。これは平均的な収入(平均標準報酬45.5万円)で40年間就業した夫と、基礎年金のみを受け取る妻を組み合わせたモデルであり、実際の金額は現役時代の働き方によって変わります。
一方、総務省が実施する令和6年全国家計構造調査では、65歳以上・夫婦のみの無職世帯の消費支出は月24万9,332円という結果が出ています。単純に並べると差は月1万円強ですが、これは全国平均同士の比較であり、ご自身の年金額・生活費とは一致しません。あくまで「目安の物差し」として使う数字です。

私から、資産の取り崩し方についても触れておきます。よく紹介される原則は、①課税口座(特定口座)を先に取り崩す ②非課税のNISA枠はできるだけ温存する ③生活費1〜2年分の現金バッファーを常に確保するの3つです。取り崩し方には、毎月一定額を引き出す定額法と、残高に対して一定割合を引き出す定率法があり、定額法は生活費が計算しやすい一方、定率法のほうが資産を長持ちさせやすい傾向があります。よく知られる「4%ルール」は米国発の目安であり、日本の年金制度を前提に単純に当てはめるものではありません、事実として。
なお、年金は65歳より遅く受け取り始める「繰下げ受給」を選ぶと、1か月遅らせるごとに0.7%ずつ増額され、最大75歳まで繰り下げれば84%増となる制度もあります(日本年金機構公式で確認済み)。健康状態やその他の資産の状況によって向き不向きが分かれるため、この記事では深く扱いませんが、選択肢の一つとして知っておくとよいでしょう。
8. 答え合わせ:「空白の5年」は乗り切れる?

ご相談の核心にお答えしますぞ。「空白の5年は、条件付きで乗り切れます。」 65歳までの雇用確保は法律で義務化されており、収入がゼロになるわけではありませんでな。継続雇用の収入で生活費をできるだけまかない、資産の取り崩しをこの5年間はできるだけ避ける——これが最初の目標です。
そして退職金やNISAの見直しも、「今すぐ全部決めなければ」と急ぐ必要はないのですぞ。まずは生活防衛資金を少し厚くすること、そして継続雇用後の実際の手取りを確認すること。この2つから始めれば、次の判断がしやすくなりますでな。

私から補足を。65歳以降は年金という柱ができますが、それだけで生活費のすべてを賄えるとは限りません。差額は、現金バッファーと資産の定率取り崩しで埋めるという設計を、今のうちに大まかにでも描いておくと安心です。
おわりに
「定年と年金の間に空白がある」という不安は、多くの方に共通するものです。しかし中身を分けてみれば、60歳からの5年間は継続雇用という支えがあり、65歳以降は年金という柱が加わります。退職金もNISAも、焦って一度に動かす必要はありません。まず生活防衛資金を少し厚くすること、そして継続雇用後の手取りを確認すること——次の一歩は、そこから始めれば十分です。次回以降も、ライフステージ別のご相談をお届けします。
それでは、良い資産構築ライフを!
よくある質問(FAQ)
Q. 継続雇用で収入が下がったら、NISAの積立額は減らすべき?
家計が苦しくなるようであれば、減額・一時停止でかまいません。すでに積み立てた分は市場に置いたまま育てることができます。
Q. 退職金は受け取ったらすぐ投資すべき?
急ぐ必要はありません。まず生活防衛資金の厚みと使い道の確定を優先し、残りは時間を分けて検討するのが無難です。
Q. 65歳から本当に年金だけで暮らせる?
一律には言えません。年金機構が示すモデル年金額と総務省の平均生活費を並べると差は小さいですが、実際の年金額・生活費は家庭ごとに異なります。現金バッファーと資産の取り崩しを組み合わせる前提で考えましょう。
Q. 年金の繰下げ受給はしたほうがいい?
1か月ごとに0.7%増額される仕組みはありますが、健康状態や他の資産状況によって向き不向きが分かれます。一律の正解はなく、個別に検討する話です。
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📌 本記事は2026年7月時点の制度をもとにした一般的な情報であり、特定の投資・年金・税務の助言ではありません。制度の最新内容・ご自身への当てはめは、厚生労働省・日本年金機構・各金融機関・専門家にご確認ください。


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