はじめに
こんにちは、【kanatoの資産構築研究所】のKanatoです。
7月に「金利1%時代の守り方」として4本の記事を書きました。個人向け国債、安全資産300万円の置き場所、体感インフレ、定期預金キャンペーン——預金と国債とキャンペーンを並べて比べるところまでは書いたのですが、私自身が結局どうしたのかを書いていませんでした。
実際には7月31日に米国国債を3本発注し、8月7日時点で受渡まで完了していることを確認しました。SBI新生銀行に置きっぱなしだった15,000ドルを、満期の違う3本へ分けました。この記事は、その設計をそのまま書き出したものです。何をいくら買ったか、なぜ利回りの高い1本ではなく3本に分けたか、そして買った直後の口座がなぜ評価損に見えるのかまで含めて記録します。

ホー、kanato理事長!比べて終わりでは研究所の名がすたるというもの。自分が実際にどう置いたかまで書いてこそ、読む方の役に立つのですな。
本記事は私自身の実践記録であり、特定の商品や購入時期を推奨するものではありません。為替の見通しも扱いません。数値は2026年8月7日時点の取引記録に基づいています。
1. 目的は「利回りの最大化」ではなく、債券枠の補充だった
最初に決めたのは、商品ではなく目的でした。
私のポートフォリオは長らく株式・投資信託に偏っていて、債券・安全資産の枠が薄い状態が続いていました。8月に公開した「インデックス投資に何を足す?債券・REIT・金を役割で整理」で、足す資産は利回りではなく役割で選ぶ、という整理をしています。今回はその枠組みを自分に当てはめた結果です。
目的を「利回りの最大化」に置くと、選択肢は社債や超長期債へ広がります。しかし今回埋めたかったのは株式とは値動きの理由が違う枠であって、利回りの上乗せではありません。目的が違えば、同じ「債券を買う」でも選ぶものが変わります。
もう一つ、動機として大きかったのが外貨の滞留でした。SBI新生銀行に米ドルが置きっぱなしになっていて、円に換えるでもなく運用するでもない状態が続いていたのです。ドルのまま運用先へ移せば、為替の判断をしないまま働かせられます。今回の資金移動はSBI新生銀行からSBI証券へ、外貨のまま行いました。
守りの資金をどう置くかという前提の整理は、「安全資産300万円の置き場所を税引後比較」と「個人向け国債 固定5年と変動10年どっち?」で書いています。今回はその円建ての整理に、外貨建ての一段を足した形です。
2. なぜ1本ではなく3本に分けたのか——ラダーという形
満期の違う債券を複数本並べて持つ形を、はしごに見立ててラダーと呼びます。今回は約1年・3年・5年の3本に分けました。
1本にまとめず分けた理由は3つあります。
① 満期が定期的に来る状態をつくるため。 満期が来れば額面が戻ってきます。そのとき金利がどうなっているかは分かりませんが、判断する機会が定期的に来ること自体に意味があります。1本に集中させると、次に動かせるのは5年後の一度きりです。
② 金利水準の読みを避けるため。 今の金利が高いのか低いのかを当てにいくと、外したときに全額が長く固定されます。満期をばらけさせておけば、買った時点の金利水準に全額を賭けずに済みます。
③ 短期の資金需要に少しだけ備えるため。 一番手前の満期が2027年9月なので、1年ちょっとで一部が現金に戻ります。
なお、米国債(Treasury Note)は2年・3年・5年・7年・10年のいずれかの期間で発行され、利率は入札時に固定されて満期まで変わらず、利子は半年ごとに支払われます(出典:TreasuryDirect「Treasury Notes」(米国財務省))。満期日がいつかが最初から決まっているので、満期をずらして並べる設計がしやすい商品です。

ラダーは利回りを上げる仕掛けではありませんぞ。「読みを外したときの傷を浅くする」ための形でしてな。当たりを狙う道具と混同されがちなのですが、狙いは逆なのですな。
債券そのものの仕組み——金利と価格の関係や、個人向け国債との違い——は「債券投資の基礎」で整理しています。
3. 実際に買った3本(2026年7月31日発注・8月7日時点で受渡完了を確認)
発注は7月31日の夕方、3本を数分おきに出しました。約定と受渡は8月7日時点の保有銘柄一覧で確認しています。
| 満期 | 表面利率 | 額面 | 約定単価 | 税引前複利利回り |
|---|---|---|---|---|
| 2027年9月30日 | 4.125% | 4,900 USD | 100.16 | 3.977% |
| 2029年9月30日 | 3.875% | 5,000 USD | 99.29 | 4.115% |
| 2031年9月30日 | 3.625% | 5,000 USD | 97.31 | 4.210% |
| 合計 | 14,900 USD | 4.1015%(額面加重) |
利回りは表面利率とは一致しません。単価100より高く買えば利回りは表面利率より下がり、安く買えば上がります。2027年満期の1本は表面利率4.125%ですが、単価100.16で買っているため利回りは3.977%です。逆に2031年満期は表面利率3.625%でも単価97.31なので4.210%になります。
3本合わせた額面は14,900ドル、額面で加重した税引前の複利利回りは4.1015%です。平年に受け取る税引前のクーポンは3本合計で577.125ドル、20.315%を単純に引くと459.88ドルになります。
実際に口座から出ていった受渡金額は14,938.90ドルでした。内訳を見ると、単価ぶんの元本は14,737.84ドルで、これは額面を162.16ドル下回っています。そこへ経過利子201.06ドルが上乗せされるため、合計では額面を38.90ドル上回りました。15,000ドルを移してこの金額を払ったので、注文後の残りは61.10ドル。3本とも特定口座で受け入れています。
利子にかかる税率20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+地方税5%)は、外国国債を含む特定公社債等の利子に適用されるものです(出典:国税庁 タックスアンサー No.1310「利息を受け取ったとき(利子所得)」・令和7年4月1日現在法令等)。
4. 買った直後は評価損に見える——経過利子という仕組み
ここが今回いちばん書きたかったところです。
受渡の完了を確認した8月7日時点で、口座の評価損益は−258.40ドル(−1.73%)でした。発注から1週間で、1.7%のマイナスです。
これは債券価格が下がったからではありません。取得金額に経過利子を含んでいるのに、受け取った利子がまだ0だからです。
債券は利払い日と利払い日のあいだにも日々利子が積み上がっています。その途中で買うと、買い手は前の利払い日から受渡日までの利子を売り手に立て替えて払います。これが経過利子です。日本証券業協会も、公社債の売買には原則として経過利子の受け払いが必要(買付時に支払い、売付時には受け取れる)と説明しています(出典:日本証券業協会「公社債の売買取引について」「2.取り引きに必要な費用」)。
立て替えた201.06ドルは、次の利払い日に半年ぶんのクーポンをまるごと受け取ることで戻ってきます。つまり支払いが先、回収が後という順番になっているだけです。今回の初回利払いは2026年9月30日なので、それまでの評価損益は経過利子を払った分だけ構造的にマイナス側へ寄ります。

私から一点、指摘させてください。この−258.40ドルを「値下がりした」と読むのは誤りです。取得額に経過利子201.06ドルが含まれ、受取利金がまだ0.00である以上、利払い前の評価損は仕組みの側から出てくるものです、事実として。価格の下落と混ぜて評価しないでください。
月次で資産を眺めている人ほど、この点は引っかかりやすいところだと思います。私自身、記録を残していなければ「買った直後に下がった」と誤解したままだったかもしれません。債券を買った直後の評価損益は、初回の利払いを受け取るまでは実質の損益になっていない——これは覚えておく価値のある癖です。
5. どこまで円高が進むと、円ベースでマイナスになるのか
外貨建てで持つ以上、円で見たときの損益には為替が乗ります。そこで、満期まで持ち切ったときに円ベースで損益がプラスかマイナスかの境目になるドル円水準を計算しました。
前提は次のとおりです。
- 満期まで保有し、額面100で償還される(途中で売らない)
- 受け取った利子も償還金も、すべて同じレートで円に換えると仮定する
- 取得の円換算は、証券会社が記録した取得時のレート(156.78〜156.79円)を基準にする
- 利子には20.315%がかかるものとする
- 償還差損益・為替差損益への課税は織り込んでいない
この前提で、円換算した取得額を、満期までに受け取るドル総額(額面+税引後のクーポン合計)で割ったのが下の水準です。
| 満期 | 円換算取得額 | 満期までの受取総額(税引後) | 分岐点となる為替 | 取得時からの円高余地 |
|---|---|---|---|---|
| 2027年9月30日 | 約 780,514円 | 5,141.59 USD | 約 151.80円 | 約 3.2% |
| 2029年9月30日 | 約 788,967円 | 5,540.36 USD | 約 142.40円 | 約 9.2% |
| 2031年9月30日 | 約 772,740円 | 5,794.36 USD | 約 133.36円 | 約 14.9% |
| 3本合計 | 約 2,342,220円 | 16,476.32 USD | 約 142.16円 | 約 9.3% |
満期が遠い本ほど、分岐点が低くなっています。受け取る利子の回数が増えるぶん、円高に対する余地が厚くなるからです。2027年満期は3%ほどの円高で境目に届きますが、2031年満期は15%近く円高が進んでようやく届きます。
つまり満期を分けたことが、為替のクッションの厚さも分けていることになります。これはラダーを組んだときに意識していなかった副産物でした。

アルセドよ、これは「円安になる」と言っておるのではありませんぞ。どこまで円高が進むと円で見てマイナスになるか、という線を引いただけでしてな。線が引けていれば、日々の値動きに一喜一憂せずに済むのですな。
いくつか注意点を添えておきます。
- この分岐点は予想ではありません。将来の為替がどうなるかは扱っていません。
- 受け取るたびに為替は違うので、実際の損益は上の単純計算とはずれます。
- 税の扱い(経過利子の控除方法、償還差損益や為替差損益の計算)によって、分岐点は数十銭から数円動きます。
- 取得為替として使った156.78〜156.79円は、私がドルを買ったレートではありません。元のドルは複数年・複数取引が混ざっていて取得履歴を復元できていないため、証券会社が記録した取得時点の換算レートを基準にしています。
6. 見送った選択肢——社債と超長期
検討して選ばなかったものも書いておきます。
社債:利回りは国債より高く取れます。ただし発行体ごとの信用リスクが乗ります。今回の目的が「安全資産枠の補充」である以上、上乗せぶんの利回りのために企業固有のリスクを足すのは目的と逆方向でした。
超長期(10年超):金利が動いたときの価格変動が大きくなります。満期まで持ち切るつもりでも、途中の評価額が大きく振れる資産を「守りの枠」に入れると、枠の意味が薄れます。
どちらも商品として悪いという話ではありません。今回の目的に合わなかったというだけです。目的を先に決めていたので、この2つは比較的あっさり落ちました。
7. 残っているリスクと、これから確認すること
正直に書いておきます。
- 為替リスクは残ります。 円換算では上の分岐点を下回る可能性があります。外貨建ての債券は、受取時の為替次第で円換算した受取額が変わり、投資元本を割り込むことがあります(出典:日本証券業協会「公社債の売買取引について」「3.公社債投資とリスク」の(4)為替リスク)。
- 満期前に売れば損が出ることがあります。 上の計算はすべて満期保有が前提です。途中で売る場合は、そのときの金利水準と提示価格次第になります。
- 2029年・2031年満期分は当面動かせません。 短期の生活資金には使えない資金として置いています。
- 税務の整理はまだ終わっていません。 ドルで米国債を買った時点の為替差損益の扱いなど、確定申告の整理は2026年分の作業として残っています。この記事は税務判断の資料ではありません。
これから確認する予定なのは、利金・償還金の受取通貨の設定、取引報告書での経過利子の正式な内訳、そして資産管理表への満期別の登録です。初回利払いは2026年9月30日なので、利子が実際に入ってきてからの姿は、あらためて記録します。
物価が1%台でも生活の実感が追いつかない話は「物価上昇率が1%台でも生活が苦しい理由」に書きました。守りの資金を動かす動機の半分は、そちら側にあります。
おわりに
今回やったことをまとめると、滞留していた15,000ドルを、目的を「債券枠の補充」に定めたうえで、満期の違う3本へ分けた——それだけです。利回りを最大化しにいったわけでも、為替を当てにいったわけでもありません。
書きながら発見があったのは2つでした。買った直後の評価損が経過利子による見かけであること。そして満期を分けたことが、円高に対する余地の厚さまで分けていたことです。どちらも、設計した時点では意識していませんでした。

私から補足を。この記事の数字はすべて満期保有を前提にした設計時点のものです。実績はまだ出ていません。初回の利払いを受け取って、はじめて設計どおりに動いたかどうかが見えます。

ホー、監査官の言うとおりですな。設計を書いた以上、答え合わせまで書くのが筋というものでしてな。
次回以降に、利払いを受け取った後の実績編をお届けします。
なお、同じ資金を円のまま置く場合にどこまで届くかは「定期預金キャンペーンは税引後でいくら?100万円・300万円で検証【2026年7月】」で税引後まで比べています。守りの資金を円で置くか、外貨のまま債券にするか。この記事は、その後者を選んだ側の記録です。
それでは、良い資産構築ライフを!


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