はじめに
こんにちは、【kanatoの資産構築研究所】のKanatoです。
2026年7月募集の個人向け国債は、固定5年が年1.95%、変動10年が初回年1.80%となりました。今の利率だけを見れば固定5年が上ですが、「これから金利が上がるなら変動10年では?」と迷うところです。
結論を先にお伝えします。現在の利率を5年間確定したいなら固定5年、今後の金利変化へ追随する余地を残したいなら変動10年です。ただし、どちらも発行後1年間は原則として中途換金できません。この記事では2026年7月21日時点の財務省資料をもとに、税引後の受取額、中途換金の条件、向いている人を整理します。

ホー、kanato理事長! これは「どちらが得か」ではなく、「何を確定させたいか」の問いでしてな。まずは今月の条件から見ていきましょうぞ。
1. 2026年7月募集分の条件を確認する
まず、今月募集されている個人向け国債の条件です。いずれも財務省が公表している数値で、募集期間・発行日は3種類とも共通です。
| 項目 | 変動10年 | 固定5年 | 固定3年 |
|---|---|---|---|
| 回号 | 第196回債 | 第184回債 | 第194回債 |
| 適用利率(税引前) | 年1.80% | 年1.95% | 年1.56% |
| 適用利率(税引後) | 年1.4343300% | 年1.5538575% | 年1.2430860% |
| 募集期間 | 2026年7月6日〜31日 | 同左 | 同左 |
| 発行日 | 2026年8月17日 | 同左 | 同左 |
この記事では、比較の軸を絞るため固定5年と変動10年の2つを扱います。固定3年は年1.56%で、より短い期間で確定させたい場合の選択肢です。
なお、個人向け国債は3種類とも次の点が共通しています。
- 購入単位は1万円から
- 償還時は額面100円につき100円(額面どおり)
- 適用利率には年0.05%の下限がある
- 利払いは年2回(毎年2月15日・8月15日)
- 発行後1年間は原則として中途換金できない
2. 何が違うのか——「確定」と「追随」
固定5年と変動10年の最大の違いは、利率の決まり方です。
固定5年は「基準金利-0.05%」で利率が決まり、発行時の利率が満期まで変わりません。今回は基準金利が年2.00%だったため、適用利率は年1.95%です。5年後まで、この利率が動くことはありません。
一方の変動10年は「基準金利×0.66」で利率が決まり、半年ごとに見直されます。今回の基準金利は年2.73%程度だったため、初回利率は年1.80%です。これは最初の半年に適用される利率で、次の半年、その次の半年と、そのときの基準金利に応じて上がることも下がることもあります。
なお、ここでいう「基準金利」は商品ごとに別の指標を指します。固定5年は5年固定利付国債の想定利回り、変動10年は10年固定利付国債の平均落札利率です。そのため両者の基準金利は同じ値になりません(今回は年2.00%と年2.73%程度)。固定5年の基準金利に0.66を掛けても変動10年の利率にはならない点に注意してください。

私から一点、指摘させてください。固定5年の年1.95%は満期まで確定しますが、変動10年の年1.80%は初回だけの利率です。同じ「適用利率」という表示でも、確定している期間がまったく違います、事実として。
言い換えると、固定5年は「今の条件を確定させる商品」、変動10年は「将来の金利変化に追随する余地を残す商品」です。どちらが優れているかではなく、性格が違うと捉えるのが正確です。
3. 100万円・300万円で税引後利子を比較する
個人向け国債の利子には、原則20.315%の税金がかかります。税引後の利子は、税引前の利子に0.79685を掛けて計算します。
100万円を1年間保有した場合(年率換算)
| 商品 | 税引前利子 | 税引後利子(概算) |
|---|---|---|
| 固定5年 | 19,500円 | 15,539円 |
| 変動10年 | 18,000円 | 14,343円 |
| 差 | 1,500円 | 1,195円 |
300万円を1年間保有した場合(年率換算)
| 商品 | 税引前利子 | 税引後利子(概算) |
|---|---|---|
| 固定5年 | 58,500円 | 46,616円 |
| 変動10年 | 54,000円 | 43,030円 |
| 差 | 4,500円 | 3,586円 |
固定5年を100万円分、満期まで5年間保有した場合、利子を再投資しない単純計算では税引後利子の合計は約77,693円です。300万円なら約233,079円になります。

私から補足を。この表の変動10年は「初回利率の年1.80%が1年間続いた場合」を仮定した年率換算です。実際には半年ごとに利率が変わるため、この金額が保証されるものではありません。また、初回の利子は保有した日数に応じて計算されます。
4. 変動10年が固定5年に追いつく条件
「将来の金利が上がるなら変動10年が有利になるのでは」という疑問は自然です。どの程度上がれば追いつくのかを、目安として計算してみます。
最初の5年間で比較すると、変動10年には半年ごとに10回の適用期間があります。最初の1回は年1.80%で確定しているため、残る9回の平均利率がどこまで必要かを求めると次のようになります。
(1.95% × 10期間 - 1.80% × 1期間)÷ 9期間 = 約1.967%
つまり、残り4年6か月の平均適用利率がおおむね年1.97%を超えれば、最初の5年間の受取利子で固定5年に並ぶ計算です。逆に下回れば、固定5年のほうが多くなります。
これは将来の予測ではなく、判断の目安にすぎません。今後の金利がこの水準を上回るかどうかは、現時点では誰にも分かりません。
5. 中途換金はできるが、普通預金とは違う
固定5年・変動10年とも、原則として発行から1年が経過すれば、1万円単位で中途換金できます。ただし、換金時には次の調整額が差し引かれます。
直前2回分の各利子(税引前)相当額 × 0.79685
おおむね直前1年分の税引後利子に相当する額です。元本部分は額面どおり戻りますが、受け取った利子のうち直近1年分を返す形になります。
なお、財務省の資料では換金する時期に応じて4通りの計算方法が示されています。上の式は最も一般的なケース(利子を2回以上受け取った後に換金する場合)です。発行から日が浅い時期の換金では計算方法が変わるため、実際に換金する際は購入した金融機関で確認してください。

私から補足を。この仕組みのため、購入から1年〜2年ほどで換金すると、受け取れる利子はごくわずかになります。「元本は割れないが、利子は思ったほど残らない」——ここを見落とすと想定と違う結果になります。
したがって、次のような資金を個人向け国債へ入れすぎるのは避けたほうが安全です。
- 1年以内に使う予定があるお金
- 病気・失業・故障などに備える生活防衛資金
- 数日から数か月以内に投資へ回す待機資金
なお例外として、保有者が亡くなった場合や、災害救助法の対象となる大規模な災害で被害を受けた場合は、1年経過前でも中途換金できることがあります。
生活防衛資金の考え方は、生活防衛資金とは?いくら貯めて、どこに置くかで整理しています。
6. 固定5年が向く人、変動10年が向く人
固定5年が向く可能性が高い人
固定5年は「現在の利率を確定させる商品」です。
- 5年以上使う予定がない円資金がある
- 年1.95%という水準に納得しており、確定させたい
- 将来の金利を予測せず、受取額を先に把握しておきたい
- 市場金利が下がったときも、現在の利率を維持したい
先の変動を気にせず、決めた条件のまま保有したい人には分かりやすい選択です。
変動10年が向く可能性が高い人
変動10年は「将来の金利変化に追随する余地を持つ商品」です。
- 今後の金利上昇の余地を残しておきたい
- 半年ごとの利率見直しを受け入れられる
- 10年満期でも、必要なら1年経過後に中途換金する考えがある
- 購入時点で利率を固定しきりたくない
ただし、市場金利が下がれば適用利率も下がります。「変動だから有利」ではなく、上にも下にも動くことを受け入れる必要があります。
両方に共通する注意——物価が上がると実質の価値は目減りする
個人向け国債は額面どおり償還されるため、円建ての元本が減ることはありません。ただし、これは「購入したときと同じ価値のお金が戻る」という意味ではありません。
例えば年1.95%で5年間運用しても、その間の物価上昇率が年2.5%であれば、受け取る利子を含めても購入時より買えるものは減ります。名目上は増えていても、実質では目減りしている状態です。
この点は固定5年でより強く効きます。物価と金利が上がっていく局面では、変動10年は半年ごとの見直しである程度追随できますが、固定5年は満期まで利率が動かないためです。「元本が減らない=価値が減らない」ではないことは、安全資産を考えるうえで押さえておきたいところです。

これは未来の金利を当てる勝負ではないのですな。固定5年は今の条件を確定させる安心、変動10年は変化に対応できる余地。どちらの安心を重く見るかで選ぶのが自然でしてな。
7. 全額を一つに決めず、分けて買う方法もある
固定5年か変動10年かを、全額で二者択一にする必要はありません。
例えば300万円のうち、100万円を固定5年、100万円を変動10年、残り100万円を普通預金に置けば、固定利率・変動利率・流動性の3つを同時に残せます。どちらか一方の読みが外れても、影響を半分に抑えられる形です。
また、個人向け国債は毎月発行されます。購入する月を分散すれば、「今月が金利の天井かどうか」を当てる必要もありません。まとまった金額を一度に入れるより、3回や6回に分けて購入する方法も考えられます。
個人向け国債を含む安全資産全体の使い分けは、現金・定期預金・個人向け国債・債券投信の使い分けも参考にしてください。債券そのものの仕組みは債券投資の基礎で解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 固定5年と変動10年、結局どちらが得ですか?
現時点では確定しません。最初の5年間で比べると、変動10年の残り9回の平均適用利率が約1.97%を上回れば変動10年、下回れば固定5年が多くなる計算です。将来の金利は予測できないため、「どちらが得か」ではなく「何を確定させたいか」で選ぶことをおすすめします。
Q. 変動10年の年1.80%は10年間続きますか?
続きません。年1.80%は最初の半年に適用される初回利率です。以降は半年ごとに「基準金利×0.66」で見直され、上がることも下がることもあります。ただし年0.05%の下限があります。
Q. 途中で現金が必要になったらどうなりますか?
発行から1年経過後であれば、1万円単位で中途換金できます。ただし直前2回分の利子(税引後相当額)が差し引かれます。元本は額面どおり戻りますが、利子はほとんど残らない場合があります。1年以内に使う可能性がある資金は、普通預金など別の場所に置くほうが安全です。
Q. 銀行の定期預金と比べてどうですか?
金利水準は金融機関やキャンペーンによって異なるため、購入時点で比較する必要があります。個人向け国債は発行体が国であること、額面で償還されること、年0.05%の下限があることが特徴です。一方、定期預金は預金保険制度の対象という違いがあります。
おわりに
2026年7月募集分では、固定5年が年1.95%、変動10年が初回年1.80%です。当初の利率だけなら固定5年が上ですが、固定5年は5年間の確定、変動10年は半年ごとの見直しという性格の違いがあります。
私自身は「将来の金利を当てる」のではなく、使う時期と役割で分ける考え方をしています。5年以上使わず現在の利率を確定させたい資金は固定5年、金利変化への追随を残したい資金は変動10年、1年以内に使う可能性がある資金は普通預金、という整理です。

安全資産というと「減らないこと」ばかりに目が向きますが、本当に大事なのは「必要なときに使えること」でしてな。利率の高さだけで決めてはいけませんぞ。

私から一点だけ。その「使えること」には、発行後1年間の換金制限と、換金時に差し引かれる調整額が含まれます。安全資産の設計は、利率と流動性の両方を見て決めるものです。
次回以降は、金利のある時代における安全資産の置き場所を、別の切り口からお届けします。
それでは、良い資産構築ライフを!


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